「直近1件の成約事例」で値付けしていませんか? 墨田区の実データ7,715件で学ぶ、四半期推移と種別・地区の切り分けで相場の転換点を見抜く方法
同じ四半期の中古マンションでも、㎡単価は28.8万円から237.5万円まで開きます。東京都墨田区の国交省データを使ったデモで、物件種別・地区名・四半期推移の3つの切り口から「今、どのセグメントの相場が動いているか」を読む手順を解説します。

「先月、近くの中古マンションが㎡単価120万円で成約しました。うちも同じくらいで売れますよね?」
こう聞かれたとき、その1件だけを根拠に値付けするのは危険です。同じ時期・同じ区の取引でも、価格は驚くほどばらつくからです。
実際に、東京都墨田区で 2026年第1四半期(1〜3月)に成約した中古マンション等246件 の㎡単価を並べると、最も安い取引が28.8万円/㎡、最も高い取引が237.5万円/㎡ でした。直近の1件は、この幅のどこにあってもおかしくありません。
このガイドでは、物件目利きリサーチの相場調査(トップページ)にある 物件種別フィルタ・地区名・取引価格推移 を使って、「1件の事例」ではなく「時系列と分布」で相場を読む方法を、墨田区の実データで解説します。
1. まずは実データで、推移を動かしてみる
下のデモは、国土交通省「不動産情報ライブラリ」の墨田区の成約価格情報 7,715件(2021年第2四半期〜2026年第1四半期、2026年10月20日取得)を四半期ごとに集計したものです。集計の方法は、トップページの「取引価格推移」グラフと同じです。
体験デモ: 東京都墨田区の取引価格推移(実データ)
国土交通省「不動産情報ライブラリ」の成約価格情報 7,715 件を四半期ごとに集計(2026.10.20 取得・最新は 2026 Q1)
墨田区全体 × 中古マンション等 の平均㎡単価(四半期ごと・20期分)
- 平均㎡単価: 直近4四半期 vs その前の4四半期
- 95.9 → 103.2万円/㎡ +7.6%
- 2024 Q2〜2025 Q1 → 2025 Q2〜2026 Q1
- 取引件数(同じ期間で比較)
- 1,239件 → 1,280件
- 件数が少ないほど平均は 1 件の影響を受けやすい
- 最新の 2026 Q1(246件)の個別の㎡単価
- 28.8〜237.5万円/㎡
- 「直近 1 件」はこの幅のどこにでもあり得る
最初に表示されている「墨田区全体 × 中古マンション等」の平均㎡単価を見てください。
- 2021年第2四半期の 78万円/㎡ から、2026年第1四半期は 109万円/㎡ まで上がっています。
- ただし、ずっと一本調子だったわけではありません。2022〜2023年は 85〜91万円/㎡ の横ばいが続き、2024年第2四半期(94万円/㎡) あたりから再び上向いています。ここが、このセグメントの「転換点」です。
- 下の数字で比べると、直近4四半期(2025年第2四半期〜2026年第1四半期)の平均㎡単価は 103.2万円/㎡。その前の4四半期の 95.9万円/㎡ より +7.6% 高く、取引件数も 1,239件 → 1,280件 と減っていません。「件数を保ったまま単価が上がっている」ので、実需に支えられた上昇と読めます。
2. 平均は「混ざりもの」で動く——物件種別で分ける
デモで物件種別を 「すべて」 にし、指標を 「平均取引価格」 に切り替えてみてください。線がギザギザに上下し、4,802万円(2023年第2四半期)から7,911万円(2025年第1四半期)まで振れます。
これは相場が乱高下したのではなく、価格帯のまったく違う取引が混ざっている ためです。墨田区の7,715件のうち、中古マンション等が6,069件、宅地(土地と建物)が1,236件、宅地(土地)が410件。土地付きの戸建てや一棟ものが多く成約した期は、それだけで平均が跳ね上がります。
「中古マンション等」に絞ると、同じ平均取引価格の線は 2022〜2023年の3,800万円前後の横ばい → 2024年第3四半期の4,177万円 → 2026年第1四半期の5,287万円 と、なめらかな上昇に変わります。種別を分けないまま「平均が下がったから相場が下がった」と判断しない ことが、最初のポイントです。
3. 地区で絞るほど、1件の重みが増す
次に地区名を 「押上」 に切り替えてください(物件種別は「中古マンション等」のまま)。
- 平均㎡単価は四半期ごとに大きく上下し、2025年第2四半期は83万円/㎡、第3四半期は130万円/㎡、第4四半期は101万円/㎡です。
- 1つの四半期の取引は 10件以下。2026年第1四半期はわずか3件です。
件数が少ないと、平均は1件の高い(安い)取引で大きく動きます。押上の直近4四半期の平均㎡単価は 107.9万円/㎡(前の4四半期の98.8万円/㎡から +9.2%)ですが、根拠になっている取引は 28件 だけです。
実務では、次の順番で見るのがおすすめです。
- 区全体 × 物件種別 で、相場の方向(上昇・横ばい・下落)と転換点をつかむ
- 地区名で絞って、その地区が区全体より高いか安いかを見る(件数が少ない期は割り引いて読む)
- 最後に 個別の取引事例 で、築年や面積の近い事例を確かめる
デモの「東向島」では、中古マンション等の平均㎡単価が直近4四半期で 97.8万円/㎡(前の4四半期の90.5万円/㎡から +8.1%)、取引件数も 102件 → 134件 と増えています。区全体と同じ方向に、件数を伴って上がっている地区は、相場の上昇を説明しやすい地区です。
4. 実務での手順(3ステップ)
ここからは、実際の画面での操作です。スクリーンショットは、押上駅付近を検索したときの実際の画面です(デモと同じ墨田区のデータ)。
STEP 1: 所在地で検索し、物件種別と地区名で絞る
トップページで物件の所在地を地図で選び、「調査開始」を押します。結果の 物件種別フィルタ で「中古マンション等」などを選ぶと、データ件数・平均取引価格・平均㎡単価・取引価格レンジ、グラフ、取引事例一覧がすべて、その種別だけで再集計されます。
地区名 には、検索した地点の地区が自動で入ります(その地区の取引が10件以上あるとき)。区全体と比べたいときは「すべての地区」に切り替えてください。
STEP 2: 「取引価格推移」で、四半期ごとの転換点を見る
少し下にある 取引価格推移 のグラフには、四半期ごとの 平均取引価格(青・左の軸) と 平均㎡単価(橙・右の軸) が表示されます。取引が2件未満の期は、平均が1件で決まってしまうため表示されません。
グラフにカーソルを合わせると、その期の平均㎡単価と平均取引価格が表示されます。平均取引価格が上がっているのに平均㎡単価が横ばい なら、広い物件の取引が増えただけかもしれません。2本の線を必ず一緒に見てください。
STEP 3: 取引事例一覧を「築年」で並べ替える
最後に、ページ下部の 取引事例一覧 で、見出しの「築年」を押して並べ替えます(もう一度押すと新しい順・古い順が切り替わります)。一覧は最初「取引時期の新しい順」に並んでいて、別の見出しを押すと、それまでの並び順が第二ソートに回ります。つまり「築年」を押すだけで「築年 → 取引時期」の順に並びます。
同じ築年帯・同じくらいの面積(㎡)の事例が、最近いくらで成約しているか。ここまで絞ってはじめて、「直近の1件」を根拠として使えるようになります。
AIで提案書の下書きまで一気に作る方法は、第2弾のガイドで解説しています。
よくある質問
- 取引価格推移のグラフは平均ですか、中央値ですか?
- 各四半期の平均です。取引が2件未満の期は、平均が1件で決まってしまうため表示されません。極端な取引の影響を確かめたいときは、「平均取引価格」カードに表示される中央値と見比べてください。町丁目ごとの㎡単価の中央値は、価格ヒートマップ(Proプラン)で確認できます。
- 相場の転換点は、どの指標で見ればいいですか?
- 市区町村全体を物件種別(中古マンション等など)で絞った「平均㎡単価」の四半期推移で、方向と転換点をつかみます。種別を分けない平均取引価格は、土地付きの高額な取引が多い期に跳ね上がるため、転換点の判断には向きません。地区名で絞った値は件数が少ない期ほど1件の重みが大きいので、割り引いて読んでください。
- 相場調査は無料で使えますか? 対象の取引の範囲は?
- ログインなしで1日1回、無料登録すると1日3回まで使えます(PDF出力はProプランの機能です)。対象は、検索した地点を含む市区町村全体の、国土交通省「不動産情報ライブラリ」の成約価格情報です。過去の取引の集計なので、将来の価格を示すものではありません。
